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1977年 Circus Magazine 『A Day At The Races』を語る

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フレディとロジャーがニューアルバム『A Day At The Races』について語る、1977年1月31日号『Circus Magazine』(アメリカの音楽誌)の全文訳を以下に載せます。

 

インタビュー時期は、アルバムが完成し、発売日が決まった頃とあるから1977年10月下旬と思われる。

英字記事の文字起こしは、神サイト『Queen Archives』様が載せているものを拝見しました。

 

01-31-1977 – Circus Magazine
https://queenarchives.com/qa/01-31-1977-circus-magazine/

若さと自信に溢れていて尊いです♪

クイーンが語る成功:ウェズリー・ストリック
『A Day At The Races』は自作の傑作

 

 「新しいクイーンのアルバムは『A Day At The Races』って言うんだ」とリードシンガーのフレディ・マーキュリーは言い「うそじゃないって!」と、笑う。
 数週前のこと、ヨーロッパ最大のバンドはスタジオで4ヵ月を過ごし、残すはあと2週間という段階だった。「なんだか僕たち、働きづめな気がするよ。」とフレディはため息をつく。「でも、仕上がって嬉しいよ。 すべては順調にすすんでいるし、リリース日も決まったし。」と彼は陽気付け加えた。
 完成に安堵した様子のクイーンの快活なリードシンガーは、慎重にアルバムのリリースが遅れた理由を話す。クイーンの5番目のアルバム『A Day At The Races』はバンド初のセルフプロデュース作品。「最終的にそうすることにしたんだ」とフレディはうなずいて、クイーンのベテランプロデューサーであるロイ・トーマス・ベイカーの不在について説明した。「僕たちは少し変化が必要だったし、自分たちでやれるって自信もあったんだ。 共同制作した他のアルバムで、すごく強くやってみたくなったんだ。」
 「すごく円満だったよ。」とドラマーのロジャー・テイラーはすぐに付け加えた。 「ロイは国内外で活動してる。一部のラフミックスは聞いてんじゃないかな、きっと。 多分、次の作品には戻ってくるよ。」一方でマーキュリーはクイーン初のスタジオ自活の試みに非常に満足している。 「良くなったと思うよ。」と彼は強調する。 「より多くを担うのは、僕たちにとってもいいことだよ。 ロイの存在は大きいけど、これは前進なんだ、本当。僕たちのキャリアの別の段階なんだ。今やるかずっとやらないかなんじゃないかって、ただ感じたんだ。」
 クイーンのいたずらっ子達はあきらめたりはしない。 「アルバムには刷新されたサウンドと、ちょっとしたサプライズもあるんだ。」とフレディは保証する。「でもクイーンサウンドの基本は保たれているよ。」アルバム 『A Day At The Races』はマーキュリーと非凡なギタリストのブライアン・メイから4曲づつ、テイラーとベースのジョン・ディーコンの1曲づつからなる。「今回は沢山の強力なシングルに恵まれたんだ。」とフレディは言う。「正直言って、選ぶのがすごく大変だったよ。ファーストシングルは好みの問題なんだ。『Somebody To Love』をそこに据えることにしたんだ。僕の曲さ。」マーキュリーは遠慮がちに付け加えた。
 「『Somebody To Love』はアレサ・フランクリンの影響を受けてる。」とテイラーは言う。 「フレディが夢中なんだ。 曲はゆるやかなゴスペル調にまとめた。 これまでやった中で一番柔らかい雰囲気の曲だと思うよ。」
 「はじめてだけど少し変わってるよね。」とフレディも言う。「でもまだ、今までのクイーン風に聞こえるよ。『A Day At The Races』はハッキリ言って『A Night At The Opera』の続編なんだ。 それ故このタイトルさ。 スタジオテクニックについては『A Night At The Opera』から多くを学んだよ。」「今回はロイのノリはないけどね。」とテイラーは言う。 「彼はたくさん技術的に貢献してくれて、僕たちはそれを活かせたよ。」
 「スタジオに入るたびにどんどん難しくなるんだ。」とフレディはいう。 「なぜかって、僕たちは進歩したいんだ。前とは違った曲作りをしてね。ファーストアルバムは簡単だよ。だって酷評されたらどうしようかということで頭の中はいっぱいだもん。 アルバム作りを重ねていくと、だれもが”ヤツらは同じことを繰り返している”って考えだす。僕はそれがすごく気になるんだ。」

 テイラーは常に挑戦していることを強調する。「3公演するために一度レコーディングを中断したんだ。 少しの間でもスタジオから離れられてよかったよ。繰り返しになるけれど、ライブはすぐに満足感を感じられるからね。」
 「クイーンの作風を保つのは難しいんだ。」とマーキュリーはいう。「いつだって独特で、より面白みのある曲を作らなきゃならないからね。」フレディ・マーキュリーは『A Day At The Races』の曲について、1曲づつかいつまんで説明をする。


 「アルバムはブライアンの『Tie Your Mother Down』って曲から始まるんだ。この間からライブにも入れたよ。 実際のレコーディングをする前にハイドパークでやってみたんだ。 ボーカル入れをする前に観客の前で曲想をつかむことができた。 すごく騒がしい曲だから、実際にやってみれてよかったよ。」

 「『You Take My Breath Away』は、ひねりのあるスローバラード。 ハイドパークでピアノでやったやつの別の録音。 20万人の前で1人で演奏するのはすごく緊張したよ。 僕の声が届くとは思えなかったしね。」と、フレディはおどける。「まあ、感情的でまったりした曲だな。」

 「 『Long Away』はブライアンの書いた12弦の曲...すごくそそられるハーモニーだよ。」

 「『The Millionaire Waltz』は全く変わった曲だよ。 こういった曲は全部のアルバムに入れたいね。」と、フレディは思わせぶりに言う。 「クイーンの枠を超えた何かさ。」
 「これは『Bohemian Rhapsody』に匹敵するよ。」とロジャー・テイラーは言い「複雑なアレンジの曲という意味でね。いくつか変拍子もある。」とドラマーは付け加える「オーバーダブはそれほど多くないけどね。」
 「ブライアンはギターを完璧にオーケストラ化したよ。」とフレディは言う。 「彼自身、今までやったことのないような事だよ。チューバからピッコロ、チェロまでこなした。 数週間かかったよ、 ブライアンは凝り症だからね。 とにかく、この曲はクイーンがこれまでやったことのないものだよ。シュトラウスのワルツさ!」

「『You And I』はジョン・ディーコンの曲。 これぞジョン・ディーコン。おまけに騒がしいギターつき。 ボーカルを録った後、ジョンは全部のギター入れをしたんだ。雰囲気が一変したよ。 彼の曲の中で最高作だと思う。」

 サイドホワイトとサイドブラックのコンセプト化された『Queen II』とは違って『A Day At The Races』はフレディの言葉を借りれば「ユニットとして Side Twoは『Somebody To Love』というシングルから始まるんだ。 アメリカでナンバーワン以外に落ち着くつもりはない。『Rhapsody』には少しがっかりしたんだ。」がっかりだって?! 「僕たちはちやほやされてるからね」とフレディは明るく認める。「『Rhapsody』は強力な曲で、ヨーロッパでは大ヒットしたんだ。 今回は二番手に甘んじるつもりはないよ。」

 「『White Man』はB面。 ブライアンの曲で、なかなかのブルース調だよ。荒っぽいボーカルをやる機会をもらった。最高のステージナンバーになると思う。」

 「 『Good Old-Fashioned Loverboy』は僕のボードビル曲の1つ。よくボードビル調で作るけど『Loverboy』は『Seaside Rendezvous』より直球だと思う。 キャッチーなビートのすごくシンプルなピアノの弾き語り曲さ。 アルバムの流れを緩めるのに必要だよね。」


 「『Drowse』はロジャーのすごく心惹かれる曲だよ。 ロジャーは正にロックンロールなやつさ。 ブライアンの素晴らしいスライドギターとロジャーの広域なボーカル。 ハミングしたくなるような曲で、僕はいつだってうたっちゃうよ。」

 「アルバムは『Teo Torriatte』というブライアンの日本の作品で終わるんだ。これは『一緒にやっていこう』という意味。胸に響く曲さ、彼の最高作の1つだよ。 ブライアンはハーモニウムと、いい感じのギターをやってる。 アルバムを締めくくるのにふさわしい曲だね。」


 前作と『Races』の関連性を視覚的に強調するため、今作は『Opera』をひっくり返したようなアートワークで、わずかに手を加えた紋章が配置されている。フレディは2つのアルバムをパッケージ化して再リリースする構想をもっている。
 パッケージ化の話は置いておいて、ロジャー・テイラーは、新しいアルバムは『A Night At The Opera』より上をいったと確信する。 「新作は強力だよ」と彼は断言し「歌詞もいいしね」
 テイラーにとって『A Day At The Races』は「過去の作品からの前進の一段階なんだ。 僕たちは、複雑になりすぎることを避けて、何も生み出せなくなる状態を回避しようとしたんだ。より純粋で基本的な感触を得ようとね。」
 クイーンは重箱の隅をつつくようなスタジオ使いで評判を落としていませんか? 「そんなわけないよ」とテイラーは答える。「念入りすぎるくらいでいいんだよ。スタジオ機器を全て把握できていれば、よりいい結果になる。 音楽的な感触を保ちつつ、人ごとでなくね。」
 マーキュリーとメイが気前よく記録的なスタジオ代を支払うことで、彼らはレコーディング費の節約に失敗した。 ボーカルとギターの無限に続くオーバーダブ、5ヶ月間のセッションが巨額な費用の要因だ。
 イギリスのマスコミによると『 A Night At The Opera』 は4万ポンドの収益があった。
 数ヶ月にわたる骨の折れるオーバーダブを終え、疲れ切った様子のフレディ・マーキュリーは素晴らしいアイディアがあるという。 「次のアルバムでは、オーケストレーションでオーケストラを編成する」という。 「僕たちはギターでやれるだけのことをやりたい。」
 ブライアンに異議はないだろうか? 「大丈夫さ」とフレディは笑う。 「僕たちはいつだって自分たちでやってきた。やりがいがあったよ。 今はもう終えたわけだから、次に行かなきゃ。」

 クイーンはまだシンセサイザーの使用には反対なのだろうか? 「僕たちはそれにはすごい嫌悪感を持ってる」と、フレディは認め「 知らないと思うけど、僕からすればブライアンはいつだってシンセサイザーよりもいい音を出すよ。」
 最後に、クイーンはイギリスを制覇しましたか?「答えにくい質問だな!」とロジャーは笑う。 「考えてみるとー」ロジャーの脳内に”Led”と”Zeppelin"の2つの語が浮かぶ。 「うん。僕たちはできたと思う。ラジオやファンレターからの反応もいい感じだよ。そんなとこかな。 スタジオではリアルな感触は得られないんだ。 ストリートとの接触もなければ、 日の光だって拝めない。」
 1月中旬から、バンドはたっぷりと光を浴びる。 「ツアー日程表を受け取ったばかりなんだけど」とフレディ「まいったよ!アメリカで2ヶ月半だ。 声がもってくれることを祈るよ。」
 超劇場型クイーンは、全く新しいショーでアメリカに猛襲をかけるつもりですか? 「全く新しいショーで?」フレディは笑う。 「あたりまえだろ!」

上の写真はMottのボーカルだったイアン・ハンターと、一緒にアルバムを作っていた、ロイ・トーマス・ベイカーが『A Day At The Races Tour』1月26日モントリオール公演の楽屋を訪れたときのもの。いろんな色のもじゃもじゃが3人並んでいると壮観ね!

次のアルバムNOTWからは、アルバムクレジットの"No Synthesizers!"の表記が消え、更に次のアルバムJazzではロイが帰ってくる。

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