■ サンシティで演奏したのは誤ちだったか？シングル"One Vision”はライブ・エイドに便乗したものだったのか？ついに、我らが閣下は批評家たちに返答し、舌打ちし返す。ウィリアム・ショウ、悪魔の代弁者に…。


ロジャー・テイラーは激怒している。「ポール・ウェラーとかは、絶対じっくりなんて考えない。ヤツらは物事を単純化してる。ダリル・ホールのようなクソ野郎には本当に腹が立つ......。」と言葉を選び、「ダリル・ホールのようなボサボサ頭(hair-dos)は、何もわかってないのに、口を挟む！」

そう、ロジャー・テイラーは、明らかに憤慨しているのだ。そして、何が彼をそこまで怒らせたかというと、クイーンは最近、南アフリカにある巨大なコンサート会場『サンシティ』をめぐって、同じポップスターたちからかなりの非難を浴びてた。昨年、ブルース・スプリングスティーン、ボノ、ダリル・ホール、ボブ・ディランといったスターたちが集まって、「サンシティで演奏するつもりはない」と曲中で宣言し、黒人が白人から隔離されるアパルトヘイト制度をどれほど嫌っているかを示した。ポール・ウェラーやダリル・ホールといった一部のスターは、サンシティで演奏したグループを公然と批判し始めたのだ。そして、そこに出演していた最も有名なグループのひとつがクイーンである。

「ある意味、演奏したことを後悔している。」とロジャーは今になって認める。「いくつか自分たちがやったことを釈明したい。認識として、基本的に僕たちはそこにいる人たちに向けて音楽を演奏した、できるだけたくさんのね。たわごとが山のように話されている、知りもしないのに。」

ブライアン・メイはもう少し踏み込んだことを言う。「そういう批判は絶対に正されることはない。僕たちはアパルトヘイトやその象徴するものに完全に反対している。でも、そこに行くことで、たくさんの橋渡しができたと思う。実際、両人種のミュージシャンに会った。彼らは皆、両手を広げて私たちを歓迎してくれた。批判を受けたのは、南アフリカの外からだけだ。」

しかし結局、クイーンは圧力に屈し、二度とそこで演奏しないことを公表。「仲良く横並びってわけだ。」ブライアンは苦々しげに語る。

彼は西ロンドンにあるとても豪華なレコーディング・スタジオに座り、そこには様々な楽器がそこら中に散らばっている。このスタジオは、クイーンがショーン・コネリー主演の映画『ハイランダー』のために書いたサウンドトラックのスピンオフ作品で、新作LPの最後の仕上げを行っているところなのだ。ブライアンによると、そのストーリーは「15世紀頃に自分が不死身であることを発見した男が、20世紀のニューヨークにたどり着き、世界中で生まれた様々な不死身の人間が一堂に会し、対決する...」というものだそうだ。

この映画から取られたニューシングル"A Kind Of Magic"は、その昔クイーンのトレードマークであった「焼け付くようなギター・ワーク」が大いに欠けている。最近のシングルはほとんどそうだ。ブライアンは、最近誰も派手なギターソロを望んでいないことに失望しているのだろうか？

「そうだね。」と彼は寂しそうに答える。「ある意味悔しいけど、これが現実だって思えるようになった。グループで好きなことをやる機会があっても、自分のやりたいことが必ずしも売れるとは限らないし、でも、それはどうしようもない。そういえば、この映画にはとても重い内容が含まれているんだ。ハイランダーはとてもヘビーな映画なんだ。」

彼が話している間、ジョン・ディーコンはこの巨大なミキシング・デスクの後ろに座って、じっと手を動かしている。フレディの姿はない。

「彼は本当にシャイなんだ」とロジャーは説明する。「彼はインタビューに答えるのが苦手だと感じているんだ。」

え？何百万人もの観客の前で、口ひげ以外何もつけずにステージを激しく飛び回る男が、シャイだって？

「ステージ上とは違うんだ。」とブライアンは答える。「人と打ち解けるのに時間がかかる。初対面の人と仲良くなるのには時間がかかるんだ。みんなが彼をどんな人だって思っているのかを、強く意識しているから、彼は何を言っても、誤解されるんだ」。

ライブ・エイドは間違いなく昨年のハイライトだ。クイーンは実にうまく立ち回った。その反応には驚いていますか？

「うん、きっとね。」とブライアンは言う。「というのも、僕らは最初『ああ、まただ！』って具合だったからね。これまで何本もやってきて、このビジネスがどういうものなのかって、ちょっと幻滅してたからね…。」

「でも、ゲルドフがやったことは素晴らしいよ。」とロジャーは続ける。「彼は純粋な気持ちからやったんだ。ジョナサン・キングのようなろくでなしは酷いレコードを世に撒く以外、なにも役に立たないないってのに、本当の良い行いを中傷できるなんて信じられないよ！ヤツが何の役に立った！」

しかし、彼らの大成功は、シングル"One Vision"がこのイベントに 『便乗』したと捉える人がいたことで少しケチがついた。特にクイーン事務所のプレスリリースで、この曲はこのイベントに『インスパイア 』されたと発表されたとき、非難も受けた。

ロジャーは、これをは恥ずべき間違いだと言う。「報道されたのを見たときは、本当にショックだった。ひどいミスで腹が立ったよ。どこかの広報担当が、間違ったことをしたんだ。それを読んだとき、マジで気が狂いそうになった。」

「僕らはたくさんのチャリティに携わっている。」ブライアンはいう。「でも、"One Vision"は自分たちがやっていることに回帰するための手段であって、自らビジネスを進めない限り、次なるライブ・エイドには間に合わない。僕らは慈善事業を専業とはしていない。音楽を作るというビジネスをしているのであって、それ自体が十分な目的なんだ。」