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RECORD MIRROR & DISC 1975年11月15日号
A rendezvous at the opera

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1975年10月中旬。
ラウンドハウススタジオで『A Night At The Opera』のミックスダウンをしているところに、レコードミラー誌がインタビューに入っています。
なぜか饒舌なマーキュリー氏、レコーディング風景が垣間見える極上記事です。下手な訳で申し訳ないですが。雰囲気だけでも伝われば嬉しいです。ささ、本文〜♪

ミキシングデスクの数フィート後ろのベンチシートから  2つの手と頭のてっぺんだけが見える。非日常的な光景だ。

細く骨ばった指が気難しげに頭のてっぺんの髪をいじり、フリルのついた袖口から伸びた、もう片方の手の爪は黒く塗られ、卓を操作する。フレディ・マーキュリーが仕事をしている。

スピーカーから息のあった短いヴォーカルラインが吐き出される。"Seaside Rendezvous"だ。止めて、また再生、そしてまたもう1度。わずかに違うだけの繰り返しが何度もなされ、黒塗りの爪先がコンソールを飛び回り、スイッチを繰り返す。

Outrage

若いエンジニアが心配そうに見守る。「フレディ、押すなよ、また擦り切れるぞ。」

ー『また 』とはどういう事だろう?

「前のは君のせいだって」とフレディが怒ったふりをしてみせ、 数分間2人はその日の失敗を検証しながら、やりあっていた。ようやくフレディは椅子に落ち着き 「やあ、お茶はいかが?」と言い、エンジニアにお茶の用意を頼む。彼はしぶしぶ応じ「俺のいない間は何も触るなよ!」と叫んで消えていった。

ー彼はあなたを信用していないの? フレディ

「そんなことないよ」とマーキュリー氏言い、呪いの言葉を付け加えた「そりゃ、ちょっとはやらかしたけどね。自分の卓使いはわかってるよ。1日の終わりになると集中力が落ちてきて、気をつけないとミスすることになるんだ。」

急がねばならない。今は10月中旬で、クイーンはツアー開始までにアルバムを仕上げようと必死だ。

Satisfaction

 「僕たちは2つのスタジオを使って作業している。ロジャーとジョンは今日の午後、サームでミキシングで、もうすぐここ(Roundhouse Studios)に来る予定だ。」とフレディは説明する。「僕が"Seaside Rendezvous"を仕上げたら、その後は彼らのばん。基本的に、僕たちはそれぞれ自分が書いた曲のミックスを担当するんだ。」

"Seaside Rendezvous"はフレディ作の1曲で、彼はそれを満足のいく仕上がりにするために大変な苦労している。「自分の曲には思い入れがあるし、もしきちんと仕上げられないなら、やらないほうがましだと思っている。」

お茶が届いて1口飲む間に、フレディとエンジニアが僅かにタイトルフレーズをいじる。見ているものにはその違いがわからなかったが、突如まとまってくる。ロジャーとジョンが到着した。フレディが通しで再生し、皆が頷き合った。

「さあ、飲みに行こうよ!」 フレディが言う。

道中で彼が尋ねてきた。「どんな感じのインタビューにしたいの?他誌も大好きなキャンプな内容がお望みならそれでもいいし、それとも音楽について聞きたい?」

Massive

「グループのメンバーは僕のインタビュー対応が好きじゃないんだ。でも、僕にいわせりゃどっちもどっちさ。」と彼は軽く言う。

ーそれについてよく議論するの?

「僕たちは何についてだって言い争うよ、しょっちゅうね。みんな自尊心が強いからそうなってしまうんだ。でも実際にはうまくやっているよ。」

パブに到着すると、他の客層に比べ、フレディは別の惑星からやって来た生き物のように見えた。

フレディがニューアルバム『A Night At The Opera』について話し始め、いかにして声を様々な楽器のように鳴らしたかについて熱弁する。

だがクイーンが急いでアルバムの完成を目指すなら、楽器を演奏するミュージシャンを入れた方が早くて簡単ではないだろうか?

「その通りだけど、それじゃクイーンではないよ」とフレディは言う。

それから彼はアルバムのトラックごとの話を始めたが、4曲くらいで、そのアイディアに飽きて、やめてもいいかな?と言った。

アルバムの最初の曲について、彼が話した内容は特に興味深いものだった。「"Death On Two Legs"という曲は、今までに書いた中で一番凶悪な歌詞なんだ。あまりにも悪意に満ちているからブライアンははじめから気に食わないって言っていた。」

ーそれは誰に向けられているの?

「それが誰なのかは書いちゃダメだと思うな。」フレディはお腹が空いたと去って行った。

待機していた運転手は道中でロンドン中心部のフレディのお気に入りの店に行くよう告げられた。「景気づけには、いつもそこに行くんだ。」

到着するとフレディは、運転手に飲みにくるよう伝え「入れておくポケットがない」と説明し家の鍵を渡す。

ーなんで?

「好きじゃないんだ」

ーじゃあ金はどうしているの?

「靴下に忍ばせているよ 」

Meanwhile...

先月のその夜の出来事から、先週金曜日のラウンドハウススタジオに話は飛ぶ。そこは完成したクイーンのニューアルバムを聞くためにジャーナリストで溢れかえっていた。

「まだアルバムのミキシングが終わっていないんですって。」 バーの女性が言う。

ー本当に?

「ね。」と、近くにいたエンジニアに確認する。「まあ、10分もすれば着くさ。」

フレディが到着した。すべてのパニックに対して、まったく動揺している様子はない。「何も心配することないよ、ダーリン。」そう言ってニヤリと笑う。「今夜はプレスプレビューがあるから、明日また戻ってリミックスするよ。」

「珍しいことじゃないさ。」と誰かが言う。「『Sheer Heart Attack』の試聴会の後、ヤツらは5回も戻ってリミックスした 。」異例ではあるが、その常識外れな流儀は認めなければならない。

ジャーナリストやレコード会社の人たちの群れの中に、見慣れない顔が1人いた。無口そうな背の高い都会的な見た目の男。

彼は何者ですかと、クイーンの広報の女性に尋ねる。

「スティーヴよ。彼は個人的なマッサージ師としてツアー全日程をクイーンと一緒に回るの。」と彼女は述べた。

「理学療法士だってば」とスティーブは少し傷ついた様子で言う。

そのとおり。クイーンには確かに流儀がある。


RECORD MIRROR & DISC. NOVEMBER I5.1975
"A rendezvous at the opera" by Ray Fox-Cumming

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