1975年5月24日号 Disc 読者投票の歓喜
Sheer Heart Attack USツアー、そして熱狂の初来日を終えて、手応えを得て帰国したクイーンは、本国イギリスで特大の花束を受け取ることになる。音楽誌DISCの読者投票で4部門を制覇。この結果にはDISCも当人たちもびっくりのニッコリ。興奮伝わる紙面を訳しました。
ライブグループ賞、トップシングル賞
国際グループ賞、イギリスグループ賞 受賞
今年の読者投票の結果が発表されたとき、最大の驚きは3つのグループ部門にあった。トップには、これまでトップ10にも入ったことのない名があった。クイーンである。
「びっくりしたよ。グループ3部門を含む4部門の受賞はすごいよ。もちろん負けるとは思ってなかったけど、どうなるかわからないからね。」
グループの反応をロジャー・テイラーが語る。「読者投票は明らかに雑誌の読者層を反映しているね。Discはいい読者を持ってるよ。」
「お目が高いね。」 フレディがニヤリと笑って同調した。
ブライアンはトップミュージシャン部門で高い評価を得た。74年のトップ10アルバムには、昨年のアルバムが2つともランクインした。実に喜ばしく感じられただろう。
「今となってはよかったよ。”Sheer Heart Attack "を買ってから、興味を持って前の2作を購入してくれた人がいる事をセールスが物語っているね。」
ブライアンは“QueenⅡ” は過小評価されていて、いつの日かクイーンのアルバムの決定打として評価される日が来ると、過去に何度も話していた。
「実際、日本では“QueenⅡ”は誇れるものだったんだ。」
フレディは「あのアルバムだけで、日本は見たこともない僕らをトップ誌の読者投票でNO.1グループに選んだんだ。」
「イギリスけなすわけじゃないけど、むこうでは毎回約25万人が投票しているんだ。」これは日本から帰国したばかりのフレディとロジャーの日本への最初の言及にすぎない。要は恋に落ちたのだ。
「ボディーガードは泣き叫ぶ僕らを連れ帰るのに、手錠をかけなきゃならなかったんだ。」とフレディは思い返す。
ロジャーは「彼らはすごく感じが良くて礼儀正しいんだ。」といい「だから帰ってくるのが怖かったんだって!こっちは荒っぽいから。」と付け加えた。
首尾よく運んだ旅とは別に、社会的にも職業的にも、アメリカと日本のツアーはクイーンにとって重要な目的を果たした。
「これは僕たちにとって初めての大きなワールドツアーで、戻ってきた今、僕たちは違った評価にたどり着いたんだ。アメリカと日本に実際に行ったことで、手紙やレポートの文脈の中だけではない、生身の人気を感じることができたんだ。」
しかし反響は移ろうものだ、今は何が変わったかを探して落ち着くとしよう。
彼らの個人的な変化は、外野から見ると、ロジャーは成功とお金がもたらす自信とステータスで一層外向的になり、一方ブライアンは己の音楽に更に入れ込み、フレディはすまして気まぐれを謳歌する。おそらく最大の変化はジョン・ディーコンに訪れたのではないだろうか。
「ジョンがやってきたときの事を覚えているよ。ステージの脇に立って、セットを全部演奏し、何も言わずにまた始めるんだ。」 とブライアンは回想する。今ではジョンはステージを動き回り、毒舌を吐きつつ外向的なユーモアを発揮するようになった。全体的に何事もとても楽しんでいるように見える。
「彼の私服を見たことある?」とロジャーが聞いてくる。「ほとんど野球帽とサングラスだよ。一度買ったら最後、そればっかりなんだ。」と言う。
どんなに稼いで成功しても(「俺たちは確かにたくさんの稼いだ」と聞いている)今でも彼らは友人やファンを大切にしている。最近、自分たちが軽視されていると感じているイギリスのファンに、彼らは何と言うだろうか?
「ごめん!僕らは一日中働いているんだ。ファンのみんなに仕事ぶりを見てもらえるように順にこなしているよ。イギリスでのツアーは今年後半までないみたいだけれど、夏にはどこかで大きなギグをやって、ファンのみんなに何が起きているかを見てもらいたいと思っている。どこでやるかは今のところ決まってないけど、いいライブにしたい。」
そしてもちろんニューアルバムにも期待がかかる。
「旅先で曲を書くことはないんだ。ちょっとしたアイデアが浮かんでくるだけでね。僕たちに必要なのは、スタジオにいるというプレッシャーで、そこからはじまるんだ。残念だけど、いつ完成してリリースできるかはわからないよ。」
ただ、シングルはあるかもしれない。「ふさわしいものが出来上がれば。僕がグランドピアノを手にするまで待ってて。」
“TOKYO ROSES:QUEEN IN JAPAN”
Rosemary Horide
この記事を書いた、Rosemary Horide(ローズマリー・ホライド)さんは、デビュ当初からクイーンに惚れ込みライブレポートにインタビュー記事など素敵な発信を重ね、後年はドキュメンタリーなどにも出演されています。
ブレイクへのカウントダウンが始まる。