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クイーンの方向性の考察:叫ぶ?囁く?

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CLTCLの発売から半年以上経過し、1980年6月30日、ようやくニューアルバム『The Game』がリリースされる。
 

そして発売と同日にアメリカツアーがスタート。

ツアー真っ只中の7月12日号の米ビルボード紙の邦訳を乗せます。

 

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クイーンの方向性の考察:叫ぶ?囁く?


ロサンゼルス - クイーンは今年になって、キャリアの岐路に立たされた。ロカビリーにインスパイアされた”Crazy Little Thing Called Love”が、Hot 100で4週1位を記録したのだ。


これまでのフレディ・マーキュリーの作風は、完璧なまでに仰々しいもので、"Bohemian Rhapsody"や"Somebody To Love”のような楽曲は、過去5年間 クイーンにゴールドとプラチナをもたらしてきた。


このシングルの気取らない魅力は、カジュアルなファンを多く取り込み、クイーンの音楽は少し自意識過剰で雅で過剰なものだと否定的な向きのあった人をも巻き込んだ。


しかし、このような定形外のヒットにどのように対処するのだろうか?このまま、よりシンプルな方向に進み、長年のファンを失うリスクを冒すのか、それとも以前のアプローチに戻って新たなファンを失うのか?


「ある意味、大変だよね。」ドラマーのロジャー・テイラーは認める。「昔のヒット曲を見に来てくれた人たちを喜ばせなければならないし。」それでもテイラーは、新しいアルバム『The Game』は "Crazy Thing"の方向にもう少し向かったと示唆する。「今のシングル(同じくマーキュリーの”Play The Game”)は、僕らの古いスタイルの典型的なものだ。でも、アルバムのほとんどは大仰なサウンドではない。」とテイラーは言う。


「パンチが効いている。ハードだし尖っている。古くさいクイーンのアルバムのようには聞こえない。」


また、このアルバムはクイーンのアルバムで初めてシンセサイザーが登場し、LPのライナーノーツにもその点が記されている。


このアルバムは、前作『Jazz』のロイ・トーマス・ベイカーではなく、クイーンがプロデュースした。1978年のLPは、クイーンが前の2枚のLP『A Day At The Races』と『News Of The World』をセルフ・プロデュース後、ベイカーとの再会を意味した。


「『Jazz』は作り込みすぎた。今回はもう少し自然発生的にやりたかったんだ 。」とテイラーは言う。「『Jazz』は好きなLPではないと認めざるをえないよ、あまりにも雑多だし、一度に10方向に向かうようなものだった。」


スタジオアルバムの発売の間隔が19ヶ月間も空いたのはクイーンとしては初めてだ。「僕たちがいつも以上に時間をかけたのは、別の何かを作るんじゃなくて、斬新な何かを手にしたかったからだ。」 とテイラーは言う。「今作は今までのアルバムの流れの中で、一番特異なものになっている。」


「”Crazy Little Thing "のバックトラックを作るのには20分くらいしかかからなかった。去年の夏、ミュンヘンのミュージックランドで最初にカットしたものなんだ。」と、テイラーは言う。


「アルバム全体を皆でスタジオで書いて、25曲を10曲に減らしたんだ。こんなに削ったのは初めてだよ。何曲かは更新して再録音するだろうけど、何曲かは破棄かな。」


 「そのうちのいくつかは、迷うに値するんだ。」とテイラーは言ってみせた。
生ぬるい反応を受けた2枚組のライヴ・アルバム 『Live Killers』は、曲数の多さにもかわらず、テイラーは1作にまとめる事に賛成したと認める。


「2枚組は好きじゃないんだ。」とテイラーは言う。「僕は腰を据えて全体を聞く事は決してない。近頃それでうまくいったのはピンク・フロイドの『The Wall』くらいだ。」


"Crazy Little Thing"が大ヒットする前には、クイーンのディスクの魅力は下り坂に見えたが、ライブアクトの人気は揺るぎないものだった。


「観客を失ったことは決してない。」とテイラーは言う。「ツアー第一弾は即完売した。会場はいつもと同じだけれど、場所によっては公演数が増えている。」
バンドはL.A.のフォーラムで火曜から金曜(8日から11日)まで4日間の夜公演を行う。ニューヨークでは、民主党全国大会がマディソン・スクエア・ガーデンで開催されるため、バッテリー・パークでの野外公演が予定されている。


ツアーは6月30日のバンクーバーを皮切りに、アメリカで42公演、カナダで4公演を行い、9月まで続く。休み明けにはクリスマスまでヨーロッパツアーを行う予定だ。
不景気もかかわらず、テイラーは、クイーンの慣例ともいえる大規模ショーで節約することはないと言う。「僕らはショーに金をかけるし、節約はしない。」と彼は言う。


照明は今回もElectro sound。音響はClair Brothers。代理人はハワード・ローズ。
テイラーはクイーンのメンバーとして初めてソロアルバムを作成し、2曲をシングルカット、セルフプロデュースをするとのことで、今後10ヶ月間はこのプロジェクトに取り組む。彼はこのアルバムがクイーンを出しているレコード会社からリリースされることを望んでいる。アメリカ、カナダではElektra /Asylum。日本、オーストラリア、ニュージーランド他はEMIからだ。


テイラーは、クイーンのステージで(ソロ)曲を披露することはおそらくないだろうし、ソロのクラブツアーも予定していないと言う。「それにはバンドを結成しなければならないだろうし、僕は今いるバンドにすごく満足している。」
テイラーは1977年にもEMIからシングルを出している。


クイーンの4人は先日、初の映画音楽、ディノ・デ・ローレンティスのふざけたスペースオペラ『フラッシュ・ゴードン』のスコアを書き終えた。グループは約40分の音楽を書き上げており、主にインストゥルメンタルだが、タイトル曲と他の数曲にボーカルトラックがある。サウンドトラックは、Queen greatest hitsとほぼ同時期に年内に発売される予定だ。 

JULY 12, 1980 “BILLBOARD” p.30
By PAUL GREIN

 

記事中で語られたクイーンの方向性。。。
今記事からすぐの8月12日に"Another hit from THE GAME."のコピーをひっさげ『Another One Bites the Dust』がシングルカットされる。

この後は、ご存知の通りです。

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