top of page

Flash Gordon

1979年の初夏、クイーンの元に奇妙な打診がくる。

今回は、みんな大好き『Flash Gordon』のおはなしだよ♪

もともと『Flash Gordon』は1934年の新聞日曜版掲載の漫画で、スペースオペラの古典。1936年にシリーズは1回目の映画化がされたそうな。

クイーンが関わった今作は、1980年公開の2回目の映画化。プロデューサーはDino De Laurentiis、監督はMike Hodges。

 

余談だが、ジョージ・ルーカスは『Flash Gordon』の映像化を希望していたそうだが、既にLaurentiisに映像権が取られてしまっていたため『Star Wars』が生まれる。

更なる余談として、1980年Flashシャツを着たフレディがアンコールでダースベーダーに跨り、ルーカスに訴えられ告訴騒動にもなった。なんだか因果を感じるねえ。

Flash+Gordon+4-03.jpg

この話が来た時期のクイーンは、JAZZ Tourを終えて、8月18日の『Saarbrücken OPEN AIR '79』に向けてシェパートンスタジオでリハーサルをしており、おそらくその席で何らかの話し合いがもたれたようだ。

が、いうまでもなくクイーンは売れっ子で多忙を極めており、すぐさま専念するというわけにもいかず、『Flash Gordon』は『The Game』の制作と一時平行する形で進行した。そんな訳で、このアルバムはスケジュール上も、制作に関わる人員も、入り組んだものとなる。

現在、明らかになっている情報は少ないが、アルバム制作の背景などはUdiscover Musicの記事がとってもわかりやすい。

クイーン『FLASH GORDON / フラッシュ・ゴードン』制作秘話
https://www.udiscovermusic.jp/essentials/queen-flash-gordon

(※このプロジェクトは特に極秘プロジェクトではなく、79年のファンクラブ誌でもロジャーにより言及されている。)

Udiscover Musicの記事の肉付けとして、

1981年のRockLine誌のブライアンのインタビューの訳を載せます。

RL.jpg

 

クイーンのブライアン・メイ フラッシュ・ゴードンのメイキングを語る。

この冬、クイーンが大規模な南米ツアーに出発する直前(彼らはスタジアムの芝生を覆う自前の人工芝を含め、たくさんの機材を持ち込んだ!)ギタリストのブライアン・メイは、サム・ジョーンズ主演の映画『フラッシュ・ゴードン』のド級のサウンドトラックの制作の舞台裏を語ることに時間を割いてくれた。一般的なサウンドトラックとは異なり、このLPは自立できており、クイーンサウンドの好例となった。ことの次第はこういうことなのだ。

Q: ここ数年の映画に見られるサウンドトラックは、基本的に映画の中で聴かれる曲を集めたBGM集のようなものが多いですね。

A: ストーリーとのつながりが希薄になる...

Q: ... フラッシュのサウンドトラックは正統派のサウンドトラックのように感じます。

A: そうだね、アルバムを買った映画を見ていない人にも、アルバムを聴いて映画の中で何が起こっているのかを わかるようにストーリーを伝えようとしたんだ。そして、映画を見たことがある人には、うまくすれば音楽にあわせて映画の情景を思い出すことができる。それと同時に、クイーンのアルバムとして成立することを僕たちは心がけた。

Q: 全体的にフラッシュのサウンドは、ザ・ゲームの数曲よりも「典型的なクイーン・サウンド 」になっていますね。

A: その通りだよ、うん。

Q: それはバンドとして意識してのことなのですか?

A: 明るい気持ちでプロジェクトに取り掛かった結果じゃないかな。僕たちはこの映画を真剣に捉えていたし、仕事はキッチリしたけれど、音楽的に完璧でなければならないとは意識してなかった。音楽的な主張をそれほど気にしていなかったし、そういうことをあまり意識していなかったからこそ、最近のいくつかのアルバムよりも少し自然なサウンドになったんじゃないかな。その恩恵を受けている部分はあると思うよ。

Q: 例えば?

A: あまり取捨選択していないという点だね。不完全な部分がいくつかあって、そそっかしさが表れているよ(笑)

Q: どうしてフラッシュのスコアリングをバンドがすることになったのですか?

A: 僕たちが惹かれたのはロックンロールグループに依頼されるような普通の映画の脚本ではなかったからなんだ。普通だったらロックグループや音楽ビジネスなど、明らかに音楽的なものを主題にした物語の作曲を依頼されるよね。前から言ってたことだけど、僕たちは、そういうプロジェクトに向いていないと思っていたし、実際、映画音楽をやることはないと思っていたんだ。でも今回のプロジェクトは、ロックとは無関係の映画の音楽を担当するチャンスだったし、制限もなかった。単に物語るだけでなく音楽を使って絵を描くことができたんだ。僕らはこの映画のアイディアが気に入ったんだ。ユーモラスなアイディアで、すごく壮大で大げさなものだったし、僕らにとっても、ちょっとした息抜きになると思ったんだ(笑)

Q: 音楽は映画の映像を見る前に作られたのですか?

A: いや、去年の初夏 ロンドンのシェパートン・スタジオにラフカットを見に行ったのが最初だった。その段階では、まだ1時間程度のフィルムしかなかったんだ。その頃は、僕たちも『The Game』の制作やツアー、その他いろいろあって、すぐに始める時間がなくてね。それで最初の30分のフィルムを見てから、場を離れて、自分たちでいくつかのアイデアを出したんだ。数週間後、僕らは前に見た映像だけを頼りに、ほとんど何もわからない状態でスタジオに入ったんだ。1週間くらいセッションする中でタイトルトラックができ、 『Football Fight』の案や、その他にもいくつかのアイディアが生まれた。実際には、映画には使わなかったものもいくつかあって、後で別の形で出すかもしれないね。

Q: バンドは最初の30分の映像を見た時に、キャラクターごとに担当を割り振って、個別に制作、あとでシーンごとに断片をまとめていくという方法を取ったというのは本当ですか?

A: うん、実際ほとんどそんな感じだったよ。最初の1週間がすぎて…ほとんど全部がこの魔法のような最初の1週間からきているんだ。並べてみたら様々なキャラクターやシーンに合わせた音楽がもうすでにたくさんあった。 でも、この段階ではミン(容赦なき人)のテーマがまだなくて、フレッドが「いいよ、僕がミンのテーマを書こう。」って言ったんだ。そして家に帰り、翌日にはミンのテーマをひっさげて戻ってきたんだ。

Q:フレディはその事を尋ねられた時「黒いシーンを全部手にいれる。」為にやったと言っていました。

A: その通りだよ(笑)

Q: あなたが書いたメインのフラッシュのテーマはどうですか?

A: 『フラッシュのテーマ』は、ラフカットを見た後に浮かんだんだ。ヒーローを予感させるシーンなので、ヒーローっぽいものが実際に必要だった。はっきりとね。アルバムとシングルに収録されている『フラッシュのテーマ』と、最初の1週間でカットしたデモ(サンプル録音)とは殆ど変わらないんだ。とても新鮮で生き生きとしたサウンドだったから、ほとんどそのままにしたんだ。

Q: 他の主要なシーンはどうですか?

A: ジョン(ディーコン)がアーボリアのテーマを書いた。フルートシンセサイザーの3声のテーマだ。この曲が、樹木人間の惑星アーボリアの雰囲気を作っている。ジョンは『フラッシュの処刑』のシーンも書いていて、これも面白いよね。ロジャー(テイラー)は 『エスケイプ・フロム・ザ・スワンプ』を作った。映画の中では、フラッシュがロープを降りて沼地に入り、彼を追う生物から逃げるために登っていくシーンで聞くことができる。ロジャーは最初『愛のテーマ』と呼ばれた曲も作ったんだけど、それは本当に厄介だった。映画の序盤で、フラッシュとデイルは地球から超空間を通ってモンゴに向かうザーコフのロケットに乗るんだけど、フラッシュとデイルがミンのダンジョンにいるときに再登場するんだ『死の独房』っていう。フレディは 『鷹人間バルタンのテーマ』を書いた。バルタンは鷹人間の王で、フラッシュと同盟を組んでミンを攻撃するんだ。

Q:音楽と映画をシンクロさせる方法を簡単に説明していただけますか?

A:スプロケットホールマシン(フィルムの穴あけ機)を使って、フィルムを走らせて、思いつくままにタイル状に並べていったんだ。フィルムにしるしをつけたりもした。ドラマーが使うのと同じように、オーディオ・キューを使って作業もできる。だから、例えば戦闘シーンの爆発音なんかは、映画の中の人がやられているのとシンクロさせてアレンジできる。すごく楽しいんだ、本当に!僕たちは運が良かったんだ。最初の1週間で作ったものは、ほとんど映画に使われたんだ。何曲かはフィルムと同期する時に再録音したし、何曲かはテープをいじくり回して少しづつ加えていったんだ。だから、この映画の音楽の半分は自分たちのオリジナルトラックから、残りの半分はスタジオの機械を通して実際に映画に合わせて再生されたものなんだ。

Q:音楽のプロデュースに大きな役割を果たされたことが伺えました。

A: 他のみんなが忙しくなってきてから、仕上げの時期がやってきたんだ。全てレイアウトされて大まかにはミックスがされていたんだけど、フィルムにダビング(配置)して、アルバム用に最適化する必要があったんだ。その時はみんな違うことをしていたから、僕がそのプロジェクトを引き受けた。フィルムにするというプロセスにも興味があったしね。アメリカツアーが始まるから、全部を監督することはできできなかったよ、アメリカにいる間に最初のダビングはイギリスで行われたんだ。最初のダビングはあまり納得できなかったけど、マイク・ホッジス監督のお陰で、マック(共同プロデューサー)と僕は、音楽の聞こえをよくするために、かなりの数を再ダビングすることができた。レベルの問題だけでなく、優れた効果音やセリフのトラックに音楽を適切にマッチさせることが大切なんだ。サウンドトラックは、音楽、セリフ、効果音のブレンドで、映画を見ている人は、一度ですべてを捉えられなければいけない。僕たちは2巡目でなんとか音楽を良くすることができたんだ。

“RockLine!” By Hedy End

Listen In As Queen's Brian May Talks About The Making Of Flash Gordon!

 

クイーンのオリジナル スタジオアルバムとしてカウントされる今作。

ボーカルありの楽曲が2曲のみなのに???と思っていたけれど

この作品のかけた熱が、インタビューからビシビシ伝わってくる。

映画音楽という新境地。

一息つく間もなく、クイーンは新たなる地平へと飛び立っていく。

いよいよ南米だ。

bottom of page