クイーンのデビューシングルが1973年7月6日に発売される1週間前、73年6月29日に発売された、フレディボーカルの7"レコードLarry Lurex(ラリー ルレックス)の『I Can Hear Music』について。
フレディの別名義ソロとして捉えられる事もあるけれど、どうやら、これはグループ名、ユニット名と捉えるのが妥当な作品のようです。
(左の写真はトライデント作成のアセテート盤)
楽曲自体はカバー。 『I Can Hear Music』by The Ronettes 1963
『Goin' Back』 by Gerry Goffin and Carole King 1966
デビュー前の『Goin' Back』 、告別式の『You've Got A Friend』
本人が選んだわけではないけれど、共にキャロル・キング。
…すごいな。
1973年ジョンは大学在学中、Robin Cableが指揮をとりフレディ、ロジャー、ブライアンと"Wall of Sound"「音の壁」の手法で録音。出来が素晴らしかったから活かしたいけれど、クイーンのデビュー計画に影響してしまうため、別名義Larry Lurexでリリースする事に。そういった事情でプロモーションもろくにしなかったため、数字にならなかった。ブライアンとロジャーの演奏はミキシングの段階で削除されたという話もあるが真偽不明。尚、このリリースの為のプロモーション写真は1枚も存在しない。
Larry Lurexについては『Life on Two Legs: Set the Record Straight』に経緯が綴られている。著者はNorman Sheffield。初期のクイーンの様子がよくわかる。泥沼の裁判から後年の和解まで、ジョン・リードやジム・ビーチも出てきて大興奮。歴史を覗き見た気分になれます。ラリーの名称については当時イケちらかしていたゲイリー・グリッターと衣装によく使われる金糸をもじってのネーミングだそうです。
(左の写真は1986年ゲイリー・グリッター氏と)
フレディ自身がラリールレックスについて語っている記述を見つけたので引用します。 "Larry Lurex & The Voles From Venus”直訳すると「ラリー・ルレックスと金星からきたハタネズミたち」 かわいいな!ここでもまた韻を踏んでるね。
蛇足。 左はきちんと"I Can Hear Music"
右はよく見ると"I Can Her Music"になってます。
ドイツ版のミスプリ。
すんごいコレクターアイテムだそうです。
参考文献
黒田史朗『クイーン』1981
Norman J Sheffield『Life On Two Legs』2013
参考サイト
eil.com "Trident Studios UK 1-sided acetate recorded" https://eil.com/shop/moreinfo.asp?catalogid=317674
Discogs "I Can Hear Music バージョン情報" https://www.discogs.com/ja/Larry-Lurex-I-Can-Hear-Music/master/93708
eil.com "German EMI vinyl 7" single with title on mis-spelt" https://eil.com/shop/moreinfo.asp?catalogid=353133