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  • 執筆者の写真QUEEN NOTE

フレディと猫たち



"I sleep with men, women, cats —“

『僕は男とも女とも猫とも寝る ー』


フレディ・マーキュリーは無類の猫好きだった。数多くの猫にまつわるエピソードが残れさており、そのどれもが可愛らしい。今回は新聞、雑誌、書籍等に散っていた、彼の猫にまつわるエピソードをまとめた。語る人により相違がある為、多少ぶれる点もありますがご容赦ください。読みやすくする為、敬称は省略させていただきました。


 

目次


 

猫のプロフィール



ジェリーと思われる三毛猫を抱えるフレディ・マーキュリー。

🐈‍⬛ Tom & Jelly


フレディとメアリーと共に同棲生活を送った2頭の猫。どちらも女の子。71年、夏のツアーで留守にした時は友人にお世話を依頼し、旅先からハガキも出している。トムとジェリーは当時としては珍しく完全室内猫だった。フレディは車通りの多い屋外に猫を出すのが心配だったそうだ。メアリーと同居を解消すると、2頭の猫はメアリーの元に引き取られた。85年にジェリーは亡くなり、フレディはソロアルバム『Mr. Bad Guy』を大好きなジェリーに捧げた。




猫のオスカーを抱える79年頃のフレディーマーキュリー。

🐈‍⬛ Oscar


フレディが彼氏トニー・バスティンと共に可愛がっていた猫。オスのジンジャーキャット。81年トニーと別れた際、フレディは「荷物をまとめて出て行け、ただし猫はおいていけ」の有名なセリフを言い渡す。その後スタフォードテラスから、ガーデンロッジにティファニーと共に引っ越す。ガーデンロッジに猫が増え始めた1990年ごろから、オスカーは外出が多くなる。フレディ没後、オスカーが住み着いた対面の家と、メアリーとで、どちらの家の猫かが法廷闘争となり、新聞記事にもなった。



猫のティファニーを抱えるフレディーマーキュリー。

🐈‍⬛ Tiffany


メアリーからプレゼントされた、唯一の純血種。ヒマラヤン ブルーポイントの女の子。1989年10月に癌を患い、それ以上苦しむことがないようフレディの同意をとり、メアリーとジムが見守る中、安楽死された。処置が済んだ知らせを受けたフレディは目に涙を浮かべる。ティファニーの亡骸は荼毘に付され、庭に埋葬された。リチャード・ヤングにより撮影されたフレディとティファニーの写真は、ナショナル・ポートレイト・ギャラリーに収蔵されている。



猫のドロシーを抱くジム・ハットンと優しく寄り添うフレディ・マーキュリー。

🐈‍⬛ Dorothy@Munich


ミュンヘン時代、フレディにプレゼントされたキジ猫。ジムが主に世話をし、フレディは自由にドロシーに会いにいっていた。だが留守がちの自分達は猫を飼うには相応しくないと、2人は友人にドロシーを託す。フレディは猫が家につくことを心得ており、住まい以外のところで猫を飼うことはしなかった。



🐈‍⬛ Tarzan@Munich


アメリカに移住する友人がミュンヘンに残していったオス猫。フレディとバーバラ・バレンティンの子どもとして引き取られ、可愛がられる。フレディ没後、バーバラはターザンの中にフレディを見出し、愛情を注いだ。ターザンはバーバラより3年早い1999年に16歳で亡くなり、バーバラは悲しみに打ちひしがれた。


1991年春号のファンクラブマガジンに掲載された猫のデライラ

🐈‍⬛ Delilah


1987年のクリスマス頃、ブルークロス動物病院からゴライアスと共に引き取られ、フレディにプレゼントされた。まるまるした完璧なミケの女の子。家に来たその日から、まるで何年も一緒にいたかのようにうちとけていた天真爛漫な子。フレディはその様子にメロメロになる。フレディ没後もガーデンロッジにとどまる。2003年ガーデンロッジを再訪したフィービーを、すっかりおばあちゃんになったデライラは覚えており、以前と同じように膝の上に乗って甘えた。




猫のゴライアスを吸うフレディ・マーキュリー。

🐈‍⬛ Goliath


1987年のクリスマス頃、ブルークロス動物病院からデライラと共に引き取られ、フレディにプレゼントされた。痩せた小柄な黒猫。フレディのことは大好きだが怖がりなところがあり、来客があると顔をだすデライラとは対照的に、物陰に隠れてしまう。ある時は脱走疑惑をかけられ、嘆き悲しんだフレディが2階から火鉢を窓の外に放り投げた。懸賞金まで用意されそうになった脱走騒動だったが、結局は車の下から無事見つかる。洗面台のボウルで寝るのが好き。


1998年春号のファンクラブマガジンに掲載された猫のミコ。

🐈‍⬛ Miko

1988年、メアリーが見つけ、フレディにプレゼントしたサビ茶の女の子。お名前は巫女から頂いている。最初こそ先住猫に避けられたり威嚇されたりしたが、デライラとゴライアスと仲良くなり、3頭で丸まって眠ったり、毛繕いをしてもらったりしていた。







カゴの中の子猫のロメオを優しく見つめるフレディ。

🐈‍⬛ Romeo

1989年8月頃、ケンジントンハイストリートのペットショップでジムが見つけてフレディにプレゼントした。キジ白の男の子。フレディは「オスカーより大きくなるぞ!」といい、実際とても大きく育った。先住猫たちに喧嘩を仕掛けることもあったが、面倒見がよい面もあり、ガーデンロッジの猫たちの頼もしい親分となった。フレディ没後、養子に出される。


子猫のリリー。

🐈‍⬛ Lily

1990年、ジョー、フィービー、ジムで相談してケンジントンハイストリートのペットショップから引き取られ、フレディにプレゼントされた。ブチが少しだけある白猫。当時フレディは白猫の出演するキャットフードのCMを見るたびに、うちにも白猫がいたらなと漏らしていた。フレディ没後、養子に出される。





 

ベッドで食事をとるフレディにつきそう、デライラとミコ。

ガーデンロッジの猫たちの暮らし

ガーデンロッジでは猫は王族のように扱われた。 あの美しい家の中を自由にそぞろ歩き、ソファーにとびのり、椅子の足に頬を擦り付け、気ままに暮らしてした。友人達は猫が繊細な調度品を倒したり壊したりするのではないかと密かに心配していたそうだが、フレディは家具よりも猫が大切だから大きな問題にはならなかった。リビングの銀のフォトフレームの写真がほぼ猫達の写真で占められていたという友人談も納得である。 猫たちの食事は1日2回。朝は缶詰、夜はジョーかフィービーが調理した鶏肉、魚、兎肉などを食べていた。フレディが食事をしていると、お裾分けをねだりに行くこともあったが、同じものをフレディ以外がお皿に入れてあげても食べることはなかった。猫の食器は毎食後きれいに洗われた。 ガーデンロッジに猫用トイレは1台のみ。けれど猫はジムが取り付けた2つの猫用フラップから庭に自由に出られた為、室内のトイレはほとんど使われなかった。そして、複数いた猫たちはおしっこで、ガーデンロッジの素敵な家具を濡らして回った。これにはフレディもまいってしまい、楽曲"Delilah"にその事が歌われる。ティファニーはトースターの中にまでおしっこをした。


ガーデンロッジの愛猫の写真立て。

留守宅の猫たち

ガーデンロッジの人間が揃って家を開ける時、セキュリティシステムの外に猫を出す為、各部屋を見回って猫をダイニングに集めなければならなかった。1頭でも見つからないときは、ドライフードの箱を振っておびきよせた。猫の点呼は、出発の約15分前には初めなければならなかった。


フレディは比較的長く家を開ける時、旅先でキャットフードやおもちゃを猫たちへお土産として買って帰った。


留守宅を預ったフィービーは、旅先のフレディと猫の電話をとりついだ。フィービー曰く、デライラを電話口に呼び、お腹を優しく押して声を聴かせていたそうだ。

1986年のクリスマス、ツリーの下の集合写真。

猫へのプレゼント

猫たちは、家に来た日を誕生日としてお祝いされた。フレディはパーティーが大好きだったので、これもパーティの素敵な口実となった。 ガーデンロッジに住まう全員が集まり、フレディからバースデイキャットに新しいおもちゃや、特別のご馳走が与えられた。


クリスマスには猫全員にクリスマスソックスが用意された。その中にはさまざまなおもちゃが詰められていた。


猫ベストをきたかっこいいフレディ。

フレディの猫ベスト

当時ジョー・ファネリのパートナーだったドナルド・マッケンジーが、リッサ・ラトクリフに依頼して、かのベストは作られた。写真をもとに制作されたベストは、1990年にドナルド・マッケンジーからフレディへクリスマスプレゼントとして贈られた。フレディはこの贈り物に大喜びし、翌年"These Are The Days Of Our Lives"のミュージック・ビデオでお披露目した。



額装されたアン・オルトマンの猫の肖像画。

猫の肖像画

1988年フレディはアン・オルトマンに、猫達の肖像画を依頼した。アンはガーデン ロッジを訪れ、猫達を写真に収めた。アン曰く、猫の写真を撮ろうとすると、お世話を焼きたがる飼い主が写真にたくさん写り込んでしまったそうだ。絵は1頭1枚ではなく、複数描かれたが、フレディは1枚だけ残して全て買い上げ、アンを驚かせた。絵は額装されダイニングルームにしばらく飾られた。


後年、オスカーを描いた1枚の絵は、ファンクラブのチャリティオークションに出品され、そのほかは2023年サザビーズから競売に出された。


ソファでデライラを抱きしめるフレディ・マーキュリー。

おわりに

フレディにとって、猫は子どもであり大切な家族だった。彼は生涯でたくさんの猫を可愛がったが、1頭として自分で猫を選んで手元においてはいない。きっと彼には猫を選ぶことはできなかっただろう。派手な散財に隠れて、フレディは猫の保護団体に多額の寄付もかかさなかった。猫の自由な精神とフレディの猫愛に乾杯!

 

参考文献


ピーター・フリーストーン,デヴィッド・ エヴァンズ『追憶のフレディ・マーキュリー』 2020,シンコーミュージック


ジム・ハットン『フレディ・マーキュリーと私』2004,ロッキングオン


David Evans, David Minns『THIS WAS THE REAL LIFE』2015,Tusitala Press


Nicola Bardola『Mercury in Muenchen』2021,Heyne Verlag


Lesley-Ann Jones『Love of My Life』2021,Coronet

 

参考サイト


Freddie Mercury.com ー Ask Phoebe


Sotheby's ー Freddie Mercury: A World of His Own

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